旧・はじめに

 

[参考までに、以前掲載していたイントロ文]

このサイトについて:

ここは、ぼくが英語で朗読した小説(主に著作権の切れた名作)やなんかをMP3ファイルにしてたくさん掲載しているサイトだ。いわば音読の効果を検証するデモみたいなものなので、試しにどれでもいいから聴いてみてほしい。

ぼくは読み上げるのが楽しくてたまらないので、「音読」よりも「朗読」というほうが好きだ。「音読」という語に慣れている人にも、もっと楽しく読むことを知ってほしいと思う。それから、できるだけ英語に没入してほしいので、文字部分はたいてい英語で書くから悪しからず。序文ぐらいは日本語で書いとくけど、本気で英語をモノにしたいんなら、日本語で書かれた英語勉強サイトなんかいつまでも見てるようじゃダメ。できるだけ早く英語オンリーに意識を切り替えよう。(Tips for more ambitious readers are grouped in the "Tips for advanced learners" category.

Tips for 英語音読ビギナーズ 

 「英語は音読でマスターできる」、なーんて唱える人はいろいろいるが、そういう人たちにどれだけ音読の実力があるのかは、正直いってあやしいケースが多い(だってほとんど自分で読んでみせてないんだもの)。音読を勧める本や教材もよく見かけるが、書店でパラパラめくってみればわかるように、たいていはありきたりでわざわざ買わなくてもいいようなシロモノばっかりだ。つまらない例文をオウムみたいに何十回も反復しろだなんて、冗談じゃない。もっと楽しく知的好奇心も満たせるオトナ向けの方法があるのに、なぜそんな洗脳まがいのやり方を押しつけるんだろうか? サンプルの音声だって、しろうとっぽいネイティブが退屈な読み方をしてるのがほとんどだし、中には音声サンプルすらないものまである。英語音読の効果が世間でいまいち評価されていないのは、そんなお歴々のせいもあるんじゃないだろうか。

それはさておき、もしあなたが本気で音読を英語習得に役立てたいと思っているんなら、それは大いに応援したいので、実践のためのヒントをいくつか紹介しておこう。

ヒント1:手本に頼らず声に出してみる

まず、音読なんだから声に出してみないことには始まらない。テキストは何でもいいが、自分で好きなものを選ぶことが大切だ(英語の素材なんかネットでいくらでも見つかるから、わざわざ買うことはない)。

たとえばスタートレックが好きな人なら、

Space... the Final Frontier. These are the voyages of the starship Enterprise. Its continuing mission: to explore strange new worlds, to seek out new life and new civilizations, to boldly go where no one has gone before.

なんかもいいだろう。よかったら声に出して読んでみてね。


ま、このナレーションは何度も耳にしている人も多いだろうから、ある意味お手本があるのと同じだが、実際には読み方のお手本なんかない文章がほとんどだ。知らない文章でも何でもバリバリ音読していくことが大切、というのがぼくの持論なので、お手本なしでどう読み進むかの心構えをまずお話ししておきたい。例として、簡単なニュース文をみてみよう。ビギナー向けのいい素材がある。Time for Kids というアメリカの子供向けニュースサイトだ(もっと大人向けの素材を、という人にはジャパンタイムズのeditorialなんかもいいと思う)。Time for Kidsの対象は小学生ぐらいだが、ばかにするなかれ。音読ビギナーにとってはこれでも結構ハードルが高いのだ。 内容が難しいからではない。音読するときにつっかえそうな要素がてんこもりなのだ。うそだと思ったら、ともかくこのサイトを開いて、どれでも面白そうな記事を選んで声に出して読んでみるといい。周りに家族がいたりしてはずかしいなら黙読してもいいが、その場合は必ず頭の中で「まぼろしの声」を出しながら、リアルタイムで通して読むこと。飛ばし読みや"速読"はここでは厳禁。では、どうぞ。

どうだろう、やってみてのご感想は? え、やっぱりお手本がないと心細いって? そういうメンタリティがそもそも問題なのだ。お手本に頼ろうとか、ネイティブを真似しようとか、そういう他力本願ではいつまでたっても自分に自信なんか持てやしない。世界で通用する自分の英語をしっかりと築くためには、まず自己流でいいから堂々と声に出してみること。はじめは「なんか変だな」と思うだろうが、いずれどこがおかしいのかが自分でつかめるようになってくる。そうすれば、お手本なんかまねしなくたって自分で直せるので、そのうち上達するのだ。

ヒント2:迷ったらとにかく辞書を引く

そもそも音読ってのは文字どおり「音に出して読むこと」だ。固有名詞だろうがなんだろうが、自分で音にできない言葉は音読できないし、相手にもちゃんと音で伝わらない。だから実際の会話にも使えない。つまり、文字づらだけしか知らない言葉は宝の持ち腐れなのだ。日本語でもそうだよね。読めない、あるいは知らない漢字がまじっている文章は、その箇所だけ意味が空白になるでしょ? 英語も同じで、知らない言葉があれば辞書をフル活用して読みと意味をしっかり把握し、世界に通じる読み方ができるようにしておかなければいけないのだ。ある意味、音読は音声コミュニケーションの実践ドリルでもある。それに不可欠なのが、こまめな辞書チェックだ。お手本なんかない素材がほとんどだから、読み方は自分で調べるしかない。それには辞書をみるのがいちばん手っ取り早い。

短い記事でも調べることは結構多くて大変かもしれないけど、一回調べておくとだいぶ楽に読めるようになるでしょ? 世界の相手に伝わりやすくなった、という自信も生まれると思う。こうしたリサーチの蓄積が多いほど、音読は読むのも聴くのもスムーズになる。音読上達のコツは、こうした調べをコツコツ楽しんでやること、かもしれない。ただむやみに読み飛ばせばいいってもんじゃないのね。

もうひとつ、ゼッタイに気をつけてほしいのは、自分ではわかったつもりの発音やアクセント位置でも実は間違って覚えているものが結構ある、という点だ。ぼくもいまだにときどき悩まされる。音読しながら「ほんとにこれでよかったっけ」と謙虚に調べて、少しずつ直していくしかないのだ。初心者だけでなく、上級を自認する人も心してかかること。

それから、アクセントや発音は人や国によって違う部分も多く、完ぺきに白黒つけようと思うとやっていられないので、ある程度調べた上でエイヤっと自分の好みで割り切ることも大切だ。You say tomahto, I say tomaetoとかいう古い歌があったが、発音はどっちでもOK、というケースがあることもわきまえておこう。

ヒント3:決め手は録音(バイオフィードバック)

最後のヒントは(ぼくがずっと前から主張してきたことだが)、自分の音読を必ず録音して何度も聴き返しなさい、ということだ(特許申請検討中:ホンマかいな?)。実はここがいちばん大事なポイントでもある。詳しくは「旧・はじめに」を読んでね。これにひとつ付け加えるなら、聴き返しにはバイオフィードバック効果がある、ということ。つまり、聴き返してヘタだなと思った部分については、直そうという意識が自然に働くので、次にやり直すときにはやや進化する、ってわけ。ただし聴き流すだけではだめで、耳を研ぎ澄まして自分のパフォーマンスと理想との違いを客観的に聴き分ける姿勢が大切だ。こうしたバイオフィードバック効果による小さな自律的進化というかミニ脱皮を積み重ねていけば、時間はかかるが発音もイントネーションも自然と相手に通じやすくなり、ボキャブラリーも増えるし、英語の音にも慣れてきて、よりナチュラルな音読ができるようになる。

だいじなのは、自分で読んだのを少し時間をおいてテキストを見ないで聴き返したときに、何を言っているのか自分自身でわからない部分がないかチェックすること。そういう箇所は、まず間違いなく他人が聞いてもわからない。言い換えると、自分自身の録音を聴いてもはっきり聞き取れるように読みなさい、ということだ。ネイティブっぽく聞こえないとか、声が変だとか、そんなことはとりあえず気にすることはない。自分は日本人なんだから日本人らしい英語で何が悪い、と開き直ればいいのだ。でも何を言っているのか聞いてる人がわからないようじゃダメ。必ず録音してチェックしてみよう。案外自分でもモゴモゴと何を言ってるのかわかんなかったりするもんなんだ。それこそが、ビギナーの乗り越えるべき最大のハードルってわけ。

世間で言われているような英語音読のススメ(特にオウム返し型のもの)はいったん水に流していただいて、ぜひICレコーダーかテレコを引っ張り出してきて、好きな本や雑誌記事を思いのままに読み上げては録音し、聴き返して楽しんでほしい。自分こそが実は自分にとって最良のインストラクターである、ってことがきっとわかるはずだ。

国井仗司 (a.k.a. George Cooney)

[以下はこのサイトの前身である「オーディオブックを作っちゃえ!」(Aug. 2008-Mar. 2009)の序文。この持論は今も変わっていない。より新しい序文ははじめにを見てね。]

このサイトを開設した理由は、こう主張したいからだ。

1.「オーディオブックは聴くより自作したほうがいい!」

オーディオブックを聴きながら、はっと気づくと眠っていて、途中経過が完全に空白…なんてことはなかっただろうか。ぼくは正直に告白すると、今まで聴いたオーディオブックの少なくとも9割以上でそんな経験をしている(単なるリスニング力の問題とは質が違うので誤解しないでね)。本の内容がつまらないのか、ナレーターが悪いのか、こっちの忍耐力が足りないのか、いずれにしてもこれじゃあちゃんと聴いたとはいいにくい。

ぼくは以前から英語の本は目で読むよりも音で聴いた方が頭に入る気がしていたので、オーディオブックをいろいろと聴いてきた。数は数えたことがないが、思いっきり控えめにみても100タイトル以上にはなるだろう(多めにみれば数百タイトルかな)。でもいろいろ聞いてみると、不満もたくさん出てくる。中でも、ナレーターが下手だと本そのものがつまらなく感じてしまう、聴く気がなくなる、というのが最大の不満だ。ぼくはノンネイティブだが、ナレーターが棒読みかどうかぐらいは聴けば分かる。名優と言われる人が読んだものでも、これはつまらなすぎ、というのもしょっちゅうだ。

最初にも書いたが、これまでに聴いたオーディオブックは9割以上がはずれだった(たぶん最初の頃に聴いたのが凄すぎたおかげで、そこそこの出来では市販物として許せなくなっているんだと思うけど)。いやしくもプロなら、眠気を誘うような読み方はしないでほしい。要するに、とうていお手本になりそうもないしろものが結構多いのだ。(ま、こっちの理解力という問題もあるし、ときたま本当に素晴らしい市販オーディオブックにも出くわすので、決して全部はあなどれないけど。)

でも考えてみると、オーディオブックなんてしょせんは本を音読しただけのもの。自分の学習用と割り切れば、特に他人に聞かせるわけでもないんだし、 いっそ自分で録音してみてもいいんじゃないだろうか。わざわざ眠たくなるようなオーディオブックなんか買わなくたって、手持ちのペーパーバックで自分専用のオーディオブックが作れるじゃないか。そう思って始めてみたら、案外楽しくて効果があるので、のめり込んでしまった。

いままでに自作したオーディオブックは30冊を超え、録音した短編や新聞コラムは200編以上になった。やればやるほど面白いし、自分のためになる。しかも、極上の英語テキストを好きなよう に選んで教材にできるんだから、贅沢きわまりない。オトナには耐えがたい凡庸な英語学習用テキストとはこれで完全におさらばできる。しかも、いろんな素材がよく頭に入ってくるので、応用力を養うにも最適だ。だから人にもすすめたいと思ったわけ。

2.「ネイティブでなくたって音読ぐらいできる!」

ところで、いい音読ってどんなものを指すんだろうか。たぶん発音や、声のトーンや、間の取り方などが言葉のニュアンスとうまく合体していて、意味がはっきりと説得力をもって伝わるもの、じゃないかと思う。自分で音読にトライしてみるとわかると思うが、特にイントネーションや強弱アクセントなど、従来の英語学習では完全に置き去りにされている部分が、音読では死活問題になる。発音も含めて、英語の「音」を総合的・多面的にとらえる努力が必須になるのだ。

で も、ぼくは決してこれをつらいとは思ったことがなく、むしろ楽しくてたまらない。ぼくにとっては音読は音楽の一種なんだ、とそこで実感した。もちろん普通の音楽も好きだが、想起されるイメージ世界の多彩さという点では、はっきりと音読に軍配が上がる。音読する時は脳がフル回転しているんじゃないかな、きっ と。それに対して、音楽は思考回路の一部分しか使っていないような気がする。

それはさておくとして、要するにインパクトをもって意味が伝わるように読みさえすれば、ネイティブでなくたってそれなりの説得力は出るだろう、っていうのがぼくの第2の主張だ。世の中には発音や音読を指導する本やサイトもいろいろあるようだが、どうして音声サンプルはたいてい著者自身じゃなくて別の人、それもネイティブが録音してるんだろう。ほんとうに発音や音読の神様みたいな著者なら自分で手本を見せればいいのに。それとも、読者にネイティブ崇拝の傾向が強いので迎合しているんだろうか。どっちにしても、なんか変だと思う。そんなセンセイ方への異議申し立ての意味も込めて、このサイトでは無謀を承知で全ページに自作サンプル音源を付けることにした。たとえばこんな感じ。

サンプル:村上春樹エルサレム賞受賞スピーチ

日本人は日本人の英語で主張すればいい。ただし、世界中の人に対して説得力を持つ形で話す必要はある。そのバランスをとることが大事だ。ネイティブが発音したものでなければ無価値であるかのような卑下した考え方は捨てよう。そもそもネイティブを無批判にありがたがる風潮には、真っ向から対決する必要があると思う。まずは評価のものさしをしっかり自分で作り上げることだ。つまり、「この読み方で世界に通じるか?」という視点で、自分自身のパフォーマンスを誰よりも厳しく審査していけばいい。それには、次のポイントも重要となる。

3.「ただ音読するだけじゃなく、必ず録音して聴き返そう!」

音読しっぱなしだと、たいてい自分のどこがよくてどこが悪いのかもわからないまま、なんとなく満足して終わってしまう。だから必ず録音したほうがいい。短くてもいいからオーディオブックという形に残るものを作って、いやというほど自分で聴きかえすことだ。

人の録音したものだと絶対聴くのが苦になるんだが、不思議なことに自分の録音したものは聴きかえすのがあんまりつらくない。かえって、今度はここをこうしようとか、あっ、言い間違えてる、などと謙虚に反省する材料になる。

最初は自分の声を聴くことに違和感があるかもしれないけど、やっていればすぐ慣れる。むしろ、どう音読したか自分で客観的にチェックしないほうがよほどコワイ。だって、目をつぶったまま化粧を塗りたくっているのとおんなじでしょ、それって。

録音すると、ほかにもメリットがある。ぼくは黙読が遅いし、読んでも内容があまり頭に残らないという悪いくせがある。そのくせ、一度読んだら分かったつもりになって読み返さないので、ものによっては読んでないのと同じかもしれない。ところが、自分でオーディオブック化したものはイメージがはっきり頭に残るし、繰り返し聴くのも苦にならない。前に読んでたなざらしになっていたペーパーバックも、こうすれば何倍も面白く再体験できる。なにより、本文の細部までが立体的に見えてくるから不思議だ。本という二次元の世界に自分の声という次元を加えることで、3Dのイマジネーションの世界が広がるのだ。 その不思議さをぜひ多くの人に体験してほしいと思う。

あなたも好きなペーパーバックをどんどんオーディオブック化して、楽しみながら英語の世界の広がりを堪能してみては?

なお、オーディオブックの自作はあくまで制作者の自己啓発を目的としたもので、販売・配布はしていない(といっても一部はポッドキャスト配信中だけど)。掲載したサンプル音源は、勝手に複製・配布しないでね。

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